#13 英語ノートへの危惧とその超克

先回の「フォニックス」に続く「等時性」ご紹介に先立ち

2009.4.22 新井小 CRT Seminar
2009.4.22 新井小 CRT Seminar

■2011年からの小学校への導入に私が危惧している大きな問題は2つあります。一つは「どのような英語教育を行おうとしているのかが漠然としている」ことです。「英語ノート」をマニュアル通りに実践しても、決してコミュニケーション能力は高まりません。

 

■例えば、5年に「自己紹介」がありますが、果物、動物、スポーツ等の英語の発音を学んで、My name is Ken. I like apples.などと全員が発表して、「だれが何を好きか」インタビュー用紙に答えをカタカナや絵に○をつけるといったゲームでおしまい。6年生に、「できることを紹介しよう」があり、I can swim. (泳げます)のように、「動作を表現する動詞」が、play, ride, cook…のようにたくさんでています。

 

■コミュニケーションの素材となる名詞や動詞の正しい発音とイメージ化だけでも、子供たちにはかなりの負担です。まして、コミュニケーションに必須なQ&A、つまり、Do you like apples? – Yes, I do. / Can you cook spaghetti? – No, I can't.に発展、定着させるには、Input(導入) – Drill(演習) – Output(自発表現)が必要なのに、素材の単語を絵と発音で一時的に覚えたような気にさせ、いきなりワンパターンの発表会かクイズ的アクティビティで終始しています。教授法が不在では、結局は生徒の負担を大きくするだけです。

 

■二つ目は指導者の問題です。最も重要なことは、それを指導する教員の①「言語感」、それに基づく②「指導技術」、そして③「情熱」です。③は、授業と担任セミナーの盛況ぶりから、先生方の熱意に感動することばかりでした。問題は①と②です。「ある英語表現のテーマでその授業が盛り上がる」ことが「良い授業」とは言えないのです。

 

■英語教育では4技能を指導することは重要な問題ですが、それらが内容、トピック、文法(表現、構文)等で複合的に関連づけられてなくては効果がありません。先ずは、教案を支えるカリキュラムが「何を目標としたいのか:理念は何か」を、小学生だからこそできる特性を生かしつつ、①、②を教員間で研鑽し続けることが求められます。

 

■「文科省から英語が降ってきて困った」、「マニュアル通りにとりあえずやってゆこう」、「盛り上がる授業にして根気のいる作業はやめておこう」…というその場しのぎの小学英語を続けるなら、「英語学習は言葉のお遊び」と甘く見たまま中学高校でも、Q&Aの世界が狭いままになる危険性を感じます。

 

■小学5,6年にぜひとも学ばせたいテーマとして、先回は「フォニックス」を紹介させて頂きました。次回は「発音の等時性」をご紹介いたします。