小学校英語で扱いたい内容―その2 「良い発音指導のコツ」-1

「等時性」 Isochrinism

「英語の発音とヒアリング」(南雲堂)より
「英語の発音とヒアリング」(南雲堂)より

■昨年度からの新井小学校での学級担任向けセミナーを実施する中で、先生たちが教授法以外に一番望んだことは「ご自身の発音を良くしたい」ことでした。子どもたちは指導者の発音を真似るわけですから当然の悩みです。語句レベルでの発音は、日本人が苦手な母音、子音とフォニックス(連載#12でご紹介済み)を学習しました。しかし、dog, cat から、日本人が苦手な father、そしてbag, bugの違いを正確に言えたとしても、文を発音するとなると、英語独特の波打つような抑揚:イントネーションをうまく発話できにくくなるのが普通です。Good morning! や、Come in, please.のような2,3語の文でしたら一息で練習できますが、例えば、Jack and Jill went up the hill. (ジャックとジルは丘へ上がった。) のような長さ以上の文になると、語単位で丁寧に言えば言うほど、聞き手には、意味不明になりがちです。

 

■日本の英語教育の大きな欠陥の一つが、「英語のイントネーションって何?」の答えを、子どもたちに習熟度に応じて、分かりやすく、根気よく教えていないことだと思っています。大学で音声学を学んだ人くらいしか「等時性」という言葉をご存じないようです。

 

■日本語には、「は、を、に…」のような助詞がありますが、英語にはほとんどありません。「ジャックとぉー、ジルわぁー、おかにぃー」のように好き勝手な文節でも通じるのは、このためですね。助詞不足の英語では、「意味群」:「意味の塊(かたまり)」を意識して発話しています。英米人は幼児でも、 ①“Jack and Jill” ②“went up” ③“the hill.”と、3つの意味群を無意識に発見して発話します。例えば、 “Jack” “and Jill” “went” “up the” “hill.”のようには言いません。同じように、 “Give” “me candy.”とは言わず、どんなにゆっくり言っても、 ①“Give me” ②“candy.”のように2つの塊として発話するのが普通です。実は、①から②、②から③までの発音上の所要時間は同じになろうとします。これを「等時性」と言います。

 

■つまり、発音を良くするためには、指導者は「意味群はどれか?」を自覚して子どもたちに真似させる必要があります。歌は、意味群とメロディ合わせてありますから、指導上大変良い素材です。しかし、日常会話はミュージカルではありませんので、歌だけの指導では限界がありますね。

 

■では、次に問題になるのは、「意味群の見つけ方」をどうするのか?です。これが分かれば、自ずと発音指導に自信が湧くことになります。次回をお楽しみに。

2010.10.09(土) 上越タイムスに掲載
2010.10.09(土) 上越タイムスに掲載